曲紹介
Nested
2008年の春に入手できました。公式サイトにIconoclassic Recordsの製品として表示されていたので、アメリカのアマゾンを介して購入しました。2008年の夏から秋にかけて、これを聴きながら旅行の計画を立てていたので、今でもこのアルバムを聴くと地球の歩き方のガイドブックを拡げながら部屋でごろごろしていたのを思い出します。
最初聴いたとき、言い方は悪いですがスマイルを薄めて引き伸ばしたような印象を受けました。例えば1曲目のミスターブルーが語りで始まっていますが、スマイルのセクシーママはごくごく短い言葉で始まっていました。スマイルが1976年発売、ネステッドが1978年発売ですから、間隔が短かったと思います。 その後マザーズ・スピリチュアルまで間が空くことを考えれば、もう少し時間をかけても良かったのではないかと思います。もちろん、後知恵的感想でしかないのですが。
しかし、繰り返し聴くうちに、このアルバムもローラの作品の重要な部分を占めるのだという確信に至りました。私がこのサイトを作り始めた2004年当時、ネステッドとマザーズ・スピリチュアルの入手の目途が立っていませんでした。ただし、ローラの音楽があまりに素晴らしかったので、二つのアルバムを持っていなくても、私は何らかウェブ上に作れるだろう、とその時点で判断しました。今でもその判断が間違っていたとは思いませんが、ネステッドとマザーズは、ローラの音楽の中でも大事な作品だと思います。
_サウンド的には、電子ピアノが採用されるようになったという点で、目新しいものがあります。もちろんこの時代ですから、デジタルピアノではありません。おそらく使われた電子ピアノ自体は、録音時点においても、そんなに新しいものではなかったと思いますが、ローラ・ニーロと言えば生のピアノというイメージが強いので、このアルバムでの電子ピアノの登場は、サウンド的に新しい印象を与えます。 もう一点サウンド上の特徴を挙げるとするなら、ベースのウィル・リーさんのはりきりぶりです。私自身はベース大好き人間なのでこれは大歓迎ですが、ちょっと目に付き過ぎな印象がなくはないです。
1曲目:ミスター・ブルー(わかり合うための歌)
“Mister Blue (The song of communications)”
最初聴いたとき、ちょっと前奏が長いので、どの歌手も活動後期になれば前奏が長くなる公式にローラも当てはまってしまうのか、と思ってしまいました。私の印象では、お腹の中のジル君に歌いかけているのかな、と思っていましたが、ちょっと違うようです。この再販版の解説をミシェル・コートさんが書いているのですが、それによると、この曲は特定の男性について歌っているそうです。
コミュ二ケイションズ、ヴァイブレイションズ、デクラレイション等の「ション」の脚韻?が結構耳にこびりついたりします。また、コンフリクツのところでその言葉の意味を示すかのように少し波立つ所なども、効果的な音作りに感じます。後半、びっくりするFで始まる単語が使われており、言葉の使い方に厳しいアメリカでは放送禁止になったのではないかと思います。
この曲は、ゆっくり宇宙空間を漂うような曲です。そのまま、きれいな曲と考えても良いのですが、しかし、現実には、宇宙空間を乗り越えてでもつながることのできない世界もあるのです。「友達になれる?」といっても、決してその声は届かない。
2曲目:リズム&ブルース
“Rhythm & Blues”最初聴いたとき、この曲の作りは普通のポピュラー音楽の書式に則っているように感じました。それでもWe’ll harmonize by starlightの所から中間部を設けているのは見事な作曲です。こういうのが安定して聴ける曲が多いのが、中期の作品の魅力だと思います。ただし音の重ねが必要以上に厚ぼったくなっているように思います。
3曲目:マイ・イノセンス
"My Innocence"無知でお人好しなのが母ゆずり。確かミシェル・コートさんの本によれば、ある事情を反映した歌詞の内容だったように記憶していますが、現在確認できません。
4曲目:クレージー・ラヴ
"Crazy Love"ピアノの下降する分散和音の音型が印象的な曲。
5曲目:アメリカン・ドリーマー
"American Dreamer"この曲のベースはウィル・リーさんではなく、トニー・レヴィンさんという人が弾いているのですが、とってもご機嫌なベースラインの走りを見せます。カッコ良いです。
6曲目:春に吹かれて
"Springblown"
「あなたの顔を見ると、いつも暖かい抱擁のよう」という歌詞の通り、心がじーんと温かくなるような歌です。このアルバムで一番のお勧めです。ローラのヴォカリーズに関しては、スマイルのキャットソングも良かったのですが、この曲に出てくるのが最高の美しさだと思います。
そして、この曲でウィル・リーさんがやってくれます。ベースが後半、朗々とD音を鳴らし続けますが、それが俄然信じられない速弾きになり、そして最後はハーモニクスなども混ぜたりします。ちょっとやり過ぎな感じもなくはなく、このあとマザーズ・スピリチュアルでベースを担当した人が、何を提案しても受け入れてもらえなかった、とのことで、もしかしたらウィル・リーさんのベースプレイは、やり過ぎだったかもしれません。しかし、この曲は素晴らしいです。こんな音楽がこの世に存在することが、何か信じられないような美しい出来事のように、私には思えます。
7曲目:やさしい空
"Sweet Sky"
8曲目:ひかり-ポップの原理
"Light-Pop’s Principle"電子キーボードを使って新しいサウンドを聴かせてくれます。曲想からは、確かに生ピアノは合わないので、良いサウンドです。
9曲目:宇宙の子供
"Child in a Universe"ちょっと前奏に難が。ちょうど1分の前奏というのは音楽的に適切なものか?歌い出してからは、素敵な曲です。これがアルバムのシメで良かったのではないかと思います。それなら宇宙で始まって宇宙で終わるという形になりましたので。歌詞の内容がとうとう宇宙にまで進出したのですから、これは進歩だと思います。この曲も電子キーボードを使って新しいサウンドを聴かせてくれます。
10曲目:巣
"The Nest"アルバムのタイトル曲でもあるので、重要な位置づけだとは思いますが、この曲は残念ながら音楽的に失敗しているように感じます。言うのも残念なことですが、メロディーが回りくどい、主和音に戻るのが不自然などの点で、後期には音楽として破綻した曲が見られるような気がします。
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