曲紹介
Smile
__前作までの強烈さとはうってかわって、落ち着いた良曲ぞろい。このアルバムを聴いてから考えると、
4枚目の"Christmas..."は独自の世界にあまりに入り込んでいるし、5枚目の"Gonna take a miracle"はジャケットの写真の顔色も含め、何か危ない方向に行きかけている感じがします。それらからすると、この"Smile"はなにかふっ切れた、ひと皮むけた落ち着きがあります。"光の季節・コンプリート"の解説では、この"スマイル"以降は60年代のローラの後日談、などと書いていますが、この"Smile"を聴く限り、とても素敵な後日談に仕上がっています。最初聴いたときは全般にボーカルの音量が押さえ気味のように感じました。この点でも今までのような高音大絶叫のぶちきれた歌い方とはちがい、ゆったりと聴けます。
_私のスマイルは輸入盤なので、ボーナストラックは入っていません。日本盤だと
9. サムワン・ラヴズ・ユー
10. ゲット・ミー・マイ・キャップ
11. コーヒー・モーニング
なる3曲が入っているようですが、私は聴いたことはありません。
1曲目:セクシー・ママ
"Sexy Mama"
_この曲はローラの作ではないのですが、まるでローラが作ったかのように自然に歌っています。私は英語ヒアリングには自信ありませんが、もしかするとこの曲、最初の一言だけで放送禁止対象曲になったかもしれません。アメリカは、厳しいです。
2曲目:ジャンクの子供たち
"Chilgren of the Junks"
_まるでジャンク船が水面をゆっくり滑っていくような、ゆったりとうとうとした曲。こうした情景を歌っているのかどうか知りませんけど。”Kowloon”というのは、香港の近くの九龍半島のことみたいですので、そんな想像をしたわけです。ジャンク船は眠っているけれど、野良猫と偏向者は目が覚めていると、いえ何のことか分かりません。
3曲目:マネー
"Money"
_この曲はロックになっている、と言えるでしょうか。どちらかといえばライブ版の"光の季節"の方がこの曲の魅力を引き出しているように思います。イーライやニューヨークの時のような高音大絶叫にならないので、こうしたアップテンポの曲も安心して聴けます。
4曲目:私はブルース
"I Am the Blues"
_私は煙草が大嫌いですが、こんなに切々と歌われたら心動かさないわけにはいきません。この曲と7曲目が"夜"の曲で、このアルバムのイメージの大きな部分を占めていると思います。この曲で圧巻なのは、ローラの歌声もさることながら、終わりの方のベースです。以前ここには、金管よりもベースをもっと聴こえるようにアレンジしてほしかった、と書いたのですが、考えを改めました。ベースが聴きたいというのは、私個人の好みであり、他の多くの人にとっては、ベースの音など聞こえないし、仮に聞こえたとしても興味はない、それよりも金管のつややかな音色に酔いたい、というところではないでしょうか。そうしてみると、アレンジをする人は上手くベースと金管の音のバランスを調整したのだと思います。
私の好みのベースに話を戻しますが、この曲のベースは、音程を安定して出しやすいように指板にフレットを付けたエレクトリックベースではなく、昔ながらのウッドベースのように思います。その滑らかな指板の上で、弦を押さえながら豪快にポルタメントしています。こういう音を、しかも安定感を持って出せるというのは、おそらく相当の基礎練習を重ね、その技術を土台として意図した音作りをしているのだと思います。凡人や生半可な気持ちの人では到底たどり着けない技術です。
5曲目:嵐の恋
"Stormy Love"
_CDだとあまり意識しませんが、この曲がB面の一曲目ですね。ローラの曲では、ギターが重要な位置を占めるものはあまりないような気がしますが、この曲のギターは印象的です。途中"fly away","cry all day"の完璧すぎる韻にちょっと苦笑。ゆったりと曲が流れ、幻想的。嵐と言うには穏やかかもしれません。
6曲目:ネコの唄
"The Cat-Song"
_この曲はある意味、一番ローラらしい曲。もう少しはつらつと歌ってほしい気がしましたが、もう前作までのような声をキンキン張り上げる、といった歌い方にならないのですね。この曲は"朝"の曲です。一方、4曲目と7曲目が明確に夜の曲です。
最初のギターの音が猫の鳴き声の真似ですが、ローラも歌声も後半でヴォカリーズで猫の鳴き声の真似をしています。この世の中、猫の真似をしたヴォカリーズの歌声、探せば他にもあるでしょうけど、これはかなり傑作になっていると思います。
7曲目:ミッドナイト・ブルー
"Midnite Blue"
_この曲はすばらしい。このアルバムで一番の獲物、と言えます。正味は短い曲ですが、最後の繰り返しに入る前の"river music"のところからの盛り上がりがすばらしい。これこそが音楽の、そして歌の感動だと思います。
8曲目:スマイル
"Smile"
_結構おしゃれな曲。4曲目の金管は気に入らないのですが、この曲では結構いい味出しています。でも、お琴はいらないような...